Future Technologies from HIMEJI 基調講演
シリコンの限界を超えるスーパー時間分解イメージセンサを目指して
Toward the super temporal resolution beyond the theoretical resolution limit of silicon image sensors
大阪大学
大学院工学研究科物理系専攻 招へい教授
江藤 剛治氏
Prof. Takeharu Goji Etoh
Guest Professor, Physics Division, Graduate School of Engineering, Osaka University
<Abstract>
市販の世界最高速のイメージセンサの時間分解能は100ns程度である.シリコンイメージセンサの限界時間分解能は約1/10,000の11.1psである.これを超えるものをスーパー時間分解イメージセンサと呼ぶことにした.今後10年程度で実現するための技術とロードマップを示す.実現すれば蛍光等の寿命計測,及びTOF MSやLiDAR等の光や荷電粒子の飛行時間計測に基づく先端計測技術の性能を飛躍的に高める.
<CV>
1968年大阪大学,1973年同大学院博士課程修了,1973年~近畿大学,2012年~立命館大学客員教授,2020年~現職.その間,近畿大学大学院総合理工学研究科長,島津製作所技術顧問,NHK放送技術研究所客員研究員等を兼任.受賞:Harold E. Edgerton Award (SPIE)等.
最新技術と古来技術とのコラボレーション
Restoration work in collaboration between the latest technology and ancient technology
元 鹿島建設株式会社 関西支店
元 姫路城大天守保存修理工事事務所 所長
野崎 信雄氏
Mr. Nobuo Nozaki
<Abstract>
50年に一度行われる姫路城大天守保存修理工事において,国宝且つ世界遺産である故,極めて制約の多い条件下での施工では,調査・計画・検討が重要か認識して,PCDAを繰り返しながら最新技術と古来技術で施工した.
<CV>
1972年4月 鹿島建設株式会社 入社
2015年6月 鹿島建設株式会社 退社
その場検出を指向した化学センサの開発
東京大学 生産技術研究所
准教授
南 豪氏
Dr.Tsuyoshi Minami
Associate Professor, Development of Chemical Sensors toward On-site Detection
The University of Tokyo
<Abstract>
目には見えない化学情報の可視化の重要性がますます高まっている。
新型コロナウィルスが社会不安をもたらす大きな一因は,誰がどこで罹患しているのか,誰も情報を有していないことに起因する。
安全・安心の社会の実現には,どこでも・だれでも・いつでも測れる化学センサの実現・普及が必要不可欠である。
その実現に向けて講演者は分子スケールからデバイスに及ぶ一気通貫型研究を実施しており,その最新成果を報告する。
<CV>
2011年3月 首都大学東京大学院 博士後期課程 修了 博士(工学)
2011年4月 米国ボーリンググリーン州立大学 博士研究員
2013年5月 同大学Research Assistant Professor
2014年1月 山形大学大学院理工学研究科 助教
2016年4月 東京大学生産技術研究所 講師
2019年9月 現職
主な受賞歴(全35件から抜粋)
2021年8月 国際純正・応用化学連合 (IUPAC) Emerging Innovator Award in Analytical Chemistry
2020年4月 文部科学大臣表彰若手科学者賞
2021年3月 日本化学会進歩賞
2017年5月 化学とマイクロ・ナノシステム学会 若手優秀賞
グラフェンの大量合成方法の開発とベンチャー企業での実用化
Development of Mass Production Method of Graphene and Its Commercialization in Venture Company
株式会社インキュベーション・アライアンス
代表取締役
村松 一生氏
Mr. Kazuo Muramatsu
CEO, Incubation Alliance, Inc.
<Abstract>
炭素の2次元結晶であるグラフェンは,グラファイトを薄片化することにより抽出され,その優れた特性が明らかになり,世界中で活発な研究開発が行われている。
株式会社インキュベーション・アライアンスは,ベンチャー企業として2007年に創業し,グラフェンを中心としたナノカーボン材料およびその応用製品の事業化に取り組んでいる。
本講演では,株式会社インキュベーション・アライアンスが世界に先駆けて開発した高速CVD法によるグラフェンの大量合成方法,各種のグラフェン製品を解説するとともに,素材系ベンチャー企業としての事業化戦略,事業化における奮闘状況について紹介する。
<CV>
1985年 豊橋技科大学 物質工学修了
1985年 株式会社神戸製鋼所入社
2007年 株式会社インキュベーション・アライアンス創業
マイクロ流体技術を用いてCOVID-19関連血栓症を科学する
Studying COVID-19-associated thrombosis via microfluidics
東京大学大学院理学系研究科化学専攻 教授
カリフォルニア大学ロサンゼルス校工学部生体工学科 非常勤教授
武漢大学工業科学研究院 非常勤教授
合田 圭介氏
Keisuke Goda
Professor, Department of Chemistry, University of Tokyo
Adjunct Professor, Department of Bioengineering, University of California, Los Angeles
Adjunct Professor, Institute of Technological Sciences, Wuhan University
<Abstract>
COVID-19関連血栓症の発症が予後増悪と関連することはよく知られている。特に,COVID-19では,微小血管内の血栓症の発生が多数報告されている。実際,COVID-19の剖検報告では,肺,心臓,その他の臓器の末梢毛細血管や細動脈内の広範なびまん性微小血栓を特徴とする広範な血栓性微小血管症が示されており,多臓器不全の原因となっている。しかし,COVID-19による微小血管血栓症のプロセスは,血小板の凝集(微小血栓形成の開始)を統計的に調べるツールがないため,いまだによくわかっていない。本講演では,東大病院に入院したCOVID-19患者(n = 110)の血中の血小板及び微小血栓をマイクロ流体チップ上で大規模1細胞イメージングを行うことにより得られた多次元解析結果を報告する。具体的には,解析結果により,COVID-19患者の約90%において,過剰な微小血栓が異常に存在することが判明した。さらに,微小血栓の濃度とCOVID-19患者の重症度,死亡率,呼吸状態,血管内皮機能障害のレベルとの間に強い関連性があるという結果が得られた。本研究成果は,COVID-19関連血栓症の病態解明及び重症化バイオマーカーの発見に資すると期待される。
<CV>
カリフォルニア大学バークレー校理学部物理学科卒業(首席)。マサチューセッツ工科大学大学院理学部物理学科博士課程修了(理学博士)。カリフォルニア工科大学,カリフォルニア大学ロサンゼルス校を経て,2012年より東京大学大学院理学系研究科化学専攻の教授。2019年よりカリフォルニア大学ロサンゼルス工学部生体工学科及び武漢大学工業科学研究院の非常勤教授。複数のベンチャー企業を創業。日本学術振興会賞,日本学士院学術奨励賞,市村学術賞,文部科学大臣表彰科学技術賞などを受賞。